保健医療福祉機関における職員間暴力防止に関する研究

挨拶

本ホームページは、科学研究費補助金(基盤研究C)を用いて実施した研究を紹介し、ハラスメント問題について考え、学んでいただく事を目的に運営されています。

まず初めに、皆さんは医療現場におけるハラスメント問題を御存じでしょうか。残念ながら、医療の現場にも職員間のハラスメント問題が存在しています。
暴力が発生するメカニズムとして、『暴力を許す社会的・文化的背景』があります。
私たちは、『ハラスメント問題は人権侵害である』ということを忘れてはなりません。
ハラスメントは、個人の問題だけではなく、その問題を放置している職場全体の問題であるという認識が不可欠です。
ハラスメントは、被害者一人に悪影響を及ぼすだけではなく、スタッフの勤労意欲低下や離職率の上昇、チーム医療の質の低下など、様々な問題を引き起こす可能性があります。

2006年に日本看護協会が発行した『保健福祉医療施設における暴力対策指針』によると、看護職員の43.3%が上司や同僚から言葉の暴力を受け、21.9%がセクハラ被害に遭っているにも関わらず、暴力被害対策は十分に取られていないことが明らかになりました。また、2009年に鹿児島県看護協会が実施した「県の看護職員に対する暴力の実態調査」によると、31%の看護職員が過去1年間に職場での精神的暴力被害を受け、そのうち27%が上司や先輩、医師といった、身近な人々によるものでした。
残念なことに、この様に深刻な状況があるにも関わらず、これまで医療福祉機関では、適切な職員間暴力防止対策のための教育研修等はほとんど実施されてこなかっただけではなく、研修等の実施状況には地域差が存在していることが明らかになりました。
具体例を挙げると、2009年に鹿児島県看護協会で実施された県内調査では、全国61%の施設で『暴力に対する報告システム』が導入されているものの、鹿児島県ではその導入は34%の施設に止まり、また、全国35%の施設で『暴力に対する教育やサポートシステム』が構築されているにも関わらず、鹿児島県の施設でのシステム構築は17%に止まっていました。

ハラスメントを防ぐためには、誰もが等しく暴力サポートシステムや暴力問題に関する教育研修を受けられる環境が必要です。

職場内のハラスメント問題が改善する事は、看護師の離職や流失を防止するためだけではなく、グループダイナミクスによる職場内の雰囲気の改善や、看護師同士の連携が深まり、ヒアリハットの減少や看護の質の向上など、職場環境が改善する事につながります。また、優秀な人材の流失予防や看護師の離職防止が期待できます。
ここでは、私たち一人一人が被害者や加害者にならぬように、職場内のハラスメント問題と解決法について、皆さんと一緒に考え、問題の解決の一助になれば幸いです。

鹿児島大学医学部保健学科臨床看護学講座
日隈利香