ハラスメント問題について
厚生労働省の調べによると、近年、「職場のハラスメント」に悩む人が増えています。
これは、医療・福祉機関で働く看護師でも同じです。
職員間のハラスメントを予防する事は患者さんへのより良い看護につながります
職場のパワハラは、相手の尊厳や人格を傷つけるだけではなく、ターゲットになってしまった人の心身の健康や命までも危険にさらす恐れがある許されない行為です。これは、一般企業だけではなく、病院や福祉施設にもいえることです。
職場内のパワハラは、職員の離職にもつながり、職場全体の士気も低下します。職員の人間関係が悪化したり、看護師の心身の健康が損なわれると、看護をしている患者さんへも悪影響を及ぼします。
誰もが自身を傷つけられることなく安心して仕事が出来る職場環境を整えることが患者さんへのより良い看護にもつながるため、これらのハラスメントを予防することが、施設管理者には求められています。
職場のパワハラを予防・解決するためには、施設や労働組合といった組織が取り組むと共に、職員一人一人が、自分のこととして取り組む必要があります。
ハラスメントとは
ハラスメントの種類として、パワー・ハラスメント(パワハラ)、モラルハラスメント(モラハラ)、セクシャルハラスメント(セクハラ)、職場でのいじめ等があります。
これらのハラスメントは、単発で起こるだけではなく、複雑に絡み合って起こっている場合もあります。
ある人にとっては指導でも、ある人にとってはハラスメントと受け取られることがあるので、一人一人が注意することが必要です。
相手との人間関係やコミュニケーションが取れていない場合や、言い方や伝え方によっては、指導がハラスメントとなる事があります。
もしも相手が不快や苦痛を感じ、心身にダメージを受けているならば、あなたが行ったこと、それは『ハラスメント』の可能性が極めて高いです。
職場のパワハラとは
同じ職場で働くものに対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性
※を背景に、業務の適切な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。
※上司から部下、先輩・後輩間、同僚間など様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。
(平成24年1月職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ報告より)
【職場のパワハラ行為にあたるもの】
- 暴行・傷害(身体的攻撃)業務の適正な範囲に含まれない
- 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的攻撃)
- 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)②~③は業務の適正な範囲を超える
- 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害、過大な要求
- 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
(過小要求) - 私的なことを過度に立ち入ること(個の侵害)
4~6は業務の適切な範囲についての判断は業種等により異なるので、職場で認識をそろえる必要がある
【職場内のパワハラ行為にはあたらないもの】
- 業務上必要な指示を出すこと
- 業務上必要な注意をすること
- 業務上実施しなくてはならない評価を行うこと
- 業務や会議で行う議論
- 仕事をする上で仕方なくかかってくるストレス
仕事をする上で、ある看護師Aさんに出来ていないところがあり、それが患者さんに悪影響を及ぼしているとするならば、それは、適切な看護が患者さんに提供されるように、Aさんに注意をし、適切な方法を指導しなくてはなりません。
上司として、新人看護師がクリアしなくてはならない看護のスキルを評価しなくてはならない場合もあります。会議の場では、違う意見をお互い述べ合う場合もあります。その時に相手と違う意見が出てしまい、議論になる場合もあるかもしれません。
これらは全て、パワハラ行為には当たりません。
しかし、相手との人間関係やコミュニケーションがまだ十分に取れていない場合には注意が必要です。会議で激論になったとしても相手に暴言を吐いたり、脅したりしては、それはもはや議論ではありません。
相手への伝え方、指示の出し方、注意の仕方が相手にどう伝わっているのかを、自分でも一度しっかり振返ってみましょう。もしも、悪気は無くとも、知らない間に相手を傷つけていた場合には、相手への謝罪も必要かもしれません。
パワハラは、個人の問題だけではなく、職場全体の問題です。つまり・・・
職場は組織として、ハラスメントの無い職場環境作りに取り組む責務があります。
パワハラを予防・解決するために職場が行う環境整備
職場や労働組合 | 職場のパワハラはなくすべきものという方針を明確に打ち出す と共に、出来ることからはじめ、充実させていく努力が重要 【予防】 トップのメッセージ、ルールを決める、実態を把握する、 教育する、周知すること 【解決】 相談や解決の場を設置する、再発を防止する |
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トップマネジメント | ハラスメント問題が生じない組織文化を育てるために、自ら範を示しながら、その姿勢を明確に示すなどの取組を行うべき |
上司 | 自らがパワハラ行為をしないだけではなく、部下にもさせてはならないが、必要な指導を適切に行うことをためらってはならない |
職場の一人ひとり | 【人格を尊重する】 互いの価値観などの違いを認め、互いを受け 止め、人格を尊重し合う 【コミュニケーション】 互いに理解し合うため、適切にコミュニケー ションを行うよう努力する 【互いの支え合い】 問題を見過ごさず、パワハラを受けた人を孤 立させずに声を掛け合うなど互いに支え合う |
関係団体へ | 職場のパワハラの予防・解決に向けた提言を周知し、対策が行われるよう支援することを期待する |
ハラスメント問題を防ぐために個人で注意すること

パワハラを予防・解決するために個人が行う事
- ハラスメントを他人に対して行わない
- ハラスメント被害に遭ったら、一人で抱え込まずに誰かに相談する
- ハラスメント被害に遭っている人に気付いたら、相談にのる
- 深刻なハラスメント問題を一人で解決する事は不可能であると考え、職場内で信頼のおける上司や職場内の相談窓口に相談してみる
- 職場内に相談出来る人や窓口がない場合や、相談しても解決に至らない場合には外部の専門機関に相談をしてみる